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『…な、何言ってるんですか。やっぱり赤石さん、ホストなんじゃないですか?僕なんか口説いても仕方ないですって。』
俺から視線を反らした。
「あのさ。この間から思ってたんだけど。楓君ってさ。そっちの人?」
『あっ、えっ?えっ?何で?僕、何か言いました?』
一瞬、驚いた顔をしてアタフタしだした。
「何も言ってないけど。でも、ほら。俺が何気にバイだって言っても驚きもしなかったしさ。男が男を口説くっていうのも何の抵抗も無い感じだし。俺の勘ってのもあるけどね。あれかな?もしかして、恋人ってのも…」
そこまで言うと俺の口を手で塞いできた。
『…この店。よく来るんで…』
俯いた。
「あー。そうだったね。ごめん。気分悪くしたよね?本当、ごめんね。」
俺の口を塞いだ手をそっと取り、林田楓を覗き込み小さな声で言った。
『…いえ。いいんです。僕の方こそすいません。ちょっとビックリしてしまって…。』
俺を見た。
「…店、出る?」
『…そう…ですね。』
ぎこちない笑顔の林田楓の頭に手をポンッっと置いて言う。
「今日は俺が奢るから。悪い事しちゃったし。奢らせて?」
でも…。と言ったが構わず会計を済ませた。
『…何か、すいません。かえって気を使わせたみたいで…』
身長差のせいで、上目遣いで俺を見つめる林田楓。
「楓君が気にしなくていいよ。楓君に嫌われたくないし。それに、これで終わりにしたくないからさ。楓君、ちょっと歩こうか。」
頷く林田楓と歩き出す。
暫くは二人共黙って歩いていた。
さっきのコンビニの前、林田楓が立ち止まった。
「どうしたの?何か買い物あった?」
一歩前で立ち止まり振り返り聞く。
『いえ。そこの先に公園ありますよね?そこでもう少し呑みません?』
ハニカミながら林田楓が言った。
「呑み足りなかった?そうだよね。俺が変な事言っちゃったから。じゃあ、俺が奢る。」
林田楓の目の前に行きニッコリ笑う。
『何言ってるんですか。さっき出して貰ったので、今度は僕が出します。』
胸を張って言う林田楓に笑って頷いた。
コンビニでビールと酎ハイを適当に買って近くの公園のベンチに座った。
「じゃあ、改めて乾杯。」
プルタブを上げ、林田楓の缶酎ハイにあてた。
『乾杯。』
林田楓もニッコリ微笑む。
「良かった。また、楓君の笑顔が見れた。さっきはどうしようかと思ったよ。」
言ってグッとビールを呑む。
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