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楓と別れ赤石稔として借りている部屋へと帰る。
シャワーを浴びて冷蔵庫からビールを取り出し一口呑むと、リビングのテーブルに置いていたスマホが鳴った。
誰だ?こんな時間に。
スマホを手に取りディスプレイを見る。
…サワさん。
通話をスライドさせて出る。
「お疲れ様です。どうしたんですか?サワさん。俺の声が聞きたくなりました?」
ソファーに腰掛ける。
《ばぁ~か。自惚れるな。》
相変わらず口の悪いサワさんに笑いながら用件を聞く。
《お前の今の仕事なんだけどな。依頼主から連絡来たらしんだわ。社長に。》
…楓の彼氏か。
「わざわざ社長にですか?」
《あぁ。何かな。早くしてくれって。結婚するって話なんだろ?結婚の話も詰まってきてるらしくってさ。身辺整理早くしねぇと落ち着かねぇんだと。》
なんだよ。それ。
「期間の指定は無かったはずですよね?本当、身勝手な男ですね。で?社長は何て言ってるんですか?」
何か、腹が立つ。
《社長はそれを聞き入れろってさ。今、どのくらいだっけか?》
「3ヶ月半位ですかね。」
ぶっきらぼうに答える。
《どの程度、進んでるんだ?》
「呑み友達ってところですね。」
テーブルに置いてある煙草に手を伸ばす。
普段はあまり吸わない煙草。
でも、苛ついた時とか気分転換する時にたまに吸っている。
《あー。そりゃあ、ちょっとおせぇな。》
煙草に火を着け煙を吐き出した。
「一途なんですよ。身体の関係まで持っていくのは難しいと思いますよ。」
《珍しく弱気だな。でもな。悪いが社長命令だ。後、2週間以内に終わらせろ。いいな。盗撮に関しては今回はレズ女が担当するらしいぜ。あいつに連絡入れとけよ。じゃあな。》
有無を言わさず切られた通話。
テーブルにスマホを投げ置きソファーに凭れ煙草を深く吸った。
…社長命令ねぇ。
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