神谷君、お仕事です。

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『神谷君。お仕事です。』 静かなオフィスに低くもなく高くもない程よい心地良い綺麗な声が響く。 手に持っていた新聞をデスクに置き、ゆっくりと椅子から腰を上げて声の主へと足を向けた。 「また、俺ですか?最近、多いですね。」 言いながら手渡された書類に視線を落とした。 『そうですね。でも、そのお陰で私達は潤うのですから良い事じゃないですか?』 綺麗な顔に笑みを浮かべるのは、ここ【別れさせ屋】の社長、柳清一(やなぎせいいち)さん。 「まぁ。そうですけど。面倒ですねぇ。」 書類に目を通しながら答える。 『仕事ですから。それに神谷君、得意分野じゃないですか。ヨロシクお願いしますよ。下調べはちゃんとしてますから、後は別れさせるだけですので。』 この人に拾われて5年。 別れさせ屋のノウハウを教え込まれた。 ついでに男も。 俺は5年前までは至ってノーマル。 それを、どちらもイケる身体に仕込んだのがこの社長だ。 因みに、ゲイもどちらでもイケる。 つまりはネコもタチも。 だから、俺はバイ。 男も女も幅広く請け負う専門家。
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