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『…そうだよねぇ。』
少し凹んでる楓。
「ちょっとトイレ。」
楓の頭にポンッっと軽く手をやり席を立った。
トイレの個室に入りスマホをポケットから取り出した。
《お疲れ様です。もうそろそろ店を出ます。店から出て少し暗がりの路地に入るので、そこで。》
明奈さんへメール送信。
《OKよ。店を出た右奥の路地裏に入って。そこならバッチリ撮れるから。》
直ぐに返ってきた返事。
スマホをポケットにしまい、トイレを出た。
カウンターに戻れば、突っ伏している楓。
「楓。大丈夫?そろそろ出ようか。」
肩に手をやり顔を覗き込む。
『…ん~。分かったぁ。』
素直に聞く楓は、結構酔っぱらっている。
会計を済ませ店を出た。
「ほらっ。楓。しっかり歩いて。」
楓の肩を抱き歩かせる。
明奈さんに言われた通り、店を出て右奥の路地裏へ進んだ。
「楓。本当、大丈夫?」
路地裏のほんのり照らされた街灯の下に立ち止まる。
「おっと。ほらっ。ちゃんと立って。」
向かい合わせに立たせると足がフラついた楓が俺の胸元に倒れ込んできた。
楓の身体を包み込む様に両腕を背中に廻した。
『…稔さ~ん。』
呂律の回ってない喋りで胸元の楓がフニャっと笑って見上げてくる。
「楓。タクシー呼ぶけど。一人で帰れる?」
『ん~。僕、稔さんだぁ~いすきだよぉ。』
ここまで酔う楓は初めてだ。
まぁ。結構なペースで呑んでたからな。
「ありがと。そんな事言うとキスしちゃうよ。」
笑いながら楓に言うと楓は俺をじっと見つめた。
『…稔さんって…キス上手そうだよねぇ…』
「上手いよ?してみる?」
笑って冗談っぽく言う。
『…僕がキス、上手くなったら…彼もまた沢山キスしてくれるかな…』
どうやら、さっきの倦怠期の話の流れから色々と考えていたらしい楓。
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