138人が本棚に入れています
本棚に追加
【別れさせ屋】としては最低な結果だ。
だけど、俺にはこれが限界。
「…よしっ。帰ろう。タクシー拾うから。楓、行くよ。」
楓の肩にポンッっと手を置いて歩く様に促す。
『ん。ありがと。稔さん。』
微笑む楓を直視出来なかった。
帰る方向が一緒だからと、タクシーで途中まで乗り合わせる事にした。
外の景色を眺めながら、これで楓とも最後なんだと考える。
最初に告げた楓のマンションへ着いた。
が、爆睡している。
「楓。着いたよ。起きて。」
揺さぶっても耳元で呼んでも反応無し。
『あのぉ。着きましたけど…』
タクシーの運転手が振り返り言った。
「…マジかよ。楓~!」
起きる気配が無く、仕方なくタクシーの運転手に俺のマンションへ向かうように言った。
予想していなかった展開に頭が痛い。
「…どうすんだよ…。」
楓を背負い赤石稔として借りているマンションに連れ帰った。
ベッドに幸せそうに横たわる楓を見てため息をついた。
寝室の扉を閉めてキッチンに向かう。
冷蔵庫から水を取り出しリビングのソファーに凭れた。
タバコに火を着けてからスマホを手に取り明奈さんへ電話をかける。
「お疲れ様です。撮れましたか?」
《神谷~。バッチリ撮れたわよ。でも、何?あれ。バカにしてるの?》
「…してませんよ。あれが限界です。きっと、それだけでも充分な材料になりますから。大丈夫ですよ。」
《そう。あんたがそう言うなら信じるわ。明日にでも社長から依頼主に渡ると思うから。後はいつも通りに。》
「…はい。それじゃあ。」
通話を終え、スマホをテーブルに置いた。
最初のコメントを投稿しよう!