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携帯アラームで目を覚ました。
寝室へ向かい楓の様子を見ると、まだ寝ている。
起こすのは可哀想だが、いつまでもここに居られては片付かない。
ベッドに眠る楓へと近付く。
「楓。楓、起きて。」
楓の身体を軽く揺さぶり起こす。
楓は身動ぎして少し唸りながら俺の方へと寝返りをうった。
「楓~。朝だよ。」
もう一度揺さぶり起こすと、うっすら目を開けた楓。
何度か瞬きをして固まった。
「楓。おはよう。大丈夫?」
楓の顔を覗き込むと、目があったかと思えば上体をバッと勢いよく起こした。
『っえっ!?何で?えっ?!何で、稔さん?!』
プチパニックの楓に笑う。
「夕べ、楓。タクシーの中で寝ちゃって。起こしたんだけど起きなくて。運転手さん困ってたから。俺ん家に連れ帰った。でも、安心して。何も無いから。」
言いながら立ち上がると俺を見上げる楓。
『…あー。そっか。そうなんだ。ごめん。何か迷惑かけちゃって。』
言いながらベッドから下りる楓。
「気にしないで。楓。俺、今からちょっと出掛けなきゃいけなくて。ゆっくりコーヒーでもって言いたいけど、そうもいかないんだよね。ごめんね。」
起きて直ぐで可哀想だけど、仕方ない。
『あっ。そうだよね。本当、ごめん。直ぐ帰るね。』
慌てる楓の頭に手をポンッっと置いた。
「楓。また呑もうね。」
言えば、おれを見上げ微笑んで頷く楓。
また。なんてもうないのに。
楓を玄関まで見送る。
手を振る楓に笑顔で手を振り返した。
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