神谷君、辞めていただきます。

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朝一、オフィスの奥の社長室へと向かった。 「失礼します。社長、おはようございます。」 一礼して挨拶をする。 『おはようございます。神谷君。』 相変わらず綺麗に微笑む社長。 久しぶりに見た清一さんに心がホッとした。 だが、それは一瞬の事だった。 『神谷君、辞めていただきます。』 綺麗な顔が真顔になって突然告げた言葉に固まった。 「…はっ?えっ?辞めて…?」 全く意味が分からない。 約4ヶ月の仕事が終わり、今日からまたオフィスに顔を出せたというのに。 「…社長…何言って…」 『これ。』 俺の言葉を最後まで聞くこともなく、デスクに投げ置かれた封筒。 「…何ですか?これ。」 『自分で確かめて下さい。』 冷めた目で社長が俺を見る。 デスクに近付き、その封筒を手に取った。 封筒を覗くと写真が数枚入っていた。 封筒に手を入れ写真を取って見る。 ……ウソ…だろ?…どういう事だ? 『その写真の日付。依頼が終わってからですよね。別れさせ屋の規則のひとつ。知ってますよね?』 淡々と告げられる言葉。 「…はい…だけどっ!これは…」 『どんな理由があるにせよ、聞き入れる事は出来ません。』 冷たく言い放たれる。 『写真だけじゃありませんよ。ほら。これはその行為を映したDVD。決定的です。』 その言葉に俺は呆然と立ち尽くした。 頭の中はパニックで、色々考える余裕もなかった。 何もかもおかしいということに、この時俺は全く気付かなかったんだ。
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