神谷君、辞めていただきます。

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清一さんを抱いたのは出逢ったその日。 抱かれたのも同じ日。 まさか、自分が同性とそんな事をする日が来るなんて思ってもいなかった。 そんな事を意識した事もなかった。 実際、清一さんと出逢った頃に俺は付き合っている彼女が居た。 別に凄く好きで付き合った彼女じゃなかった。 なんとなくで付き合った。 だから、清一さんに誘われた時に何の迷いも無かった。 男同士の魅力を全て教えてあげると言われて頷いた。 衝撃的だった。 男同士がこんなに感じるものだと知った時は、鳥肌がたった。 女みたいにふくよかな胸も無く、抱き締めればすっぽり身体が納まる体格でも無い。 自分と同じモノが付いている同性同士のセックス。 未知の世界だった。 はっきり言えば、今まで抱いた女の誰よりも良くて感じた。 抱いても抱かれても。 でも、それは清一さんだからだと後から気付いた。 【別れさせ屋】に清一さんにスカウトされ、仕事で何人もの男女を抱いてきた。 勿論、抱かれたことも。 だけど、そのどれもに清一さん程の感じ方はしなかった。 誰を抱いても同じで。 誰に抱かれても同じ。 仕事が終わった後、清一さんと身体を重ねる度に実感していた。 だけど、そんな事。 清一さんに言えるはずがない。 清一さんとは身体だけの関係。 そして、社長と部下。 ちゃんと分かっていたから。
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