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『…それって、ただの都合のいい奴じゃん。』
凹む楓に苦笑いする。
「だから、そうじゃなくてさ。捉え方じゃない?少なからず彼も楓の事好きだったから別れられなくて今まできたんじゃないの?別れる理由がないから。だって、ほら。楓、恋人としては完璧だろ?彼がもし他に良い人が出来ても、楓の事を考えると無下にも出来なかったのかもしれないしさ。ただ単に好きな人が出来たから別れようって言われたら楓だってショックが大きいだろうし。彼も一応、楓が吹っ切れる方法を選んだんじゃない?まぁ。彼じゃないから分からないけどさ。」
俺の話を酎ハイをチビチビ呑みながら聞く楓。
『…そんな事言われたら嫌いになれないじゃん。稔さんのバカ。』
うるうるした目で俺を睨む楓。
「あー。はいはい。ごめん、ごめん。そうだね。最低な彼だね。楓を泣かすなんて。本当、最悪。」
機嫌を損ねたらしい楓に言えば更に膨れた。
『そこまで、言わなくても。』
なんだそれ。
「もうさ。とにかく忘れな。楓にはきっと良い人見つかるから。次に行こう。次。ねっ?」
励まそうと言えば何故か俯く。
昨日に続き結構呑んでる楓。
『…好きだったのに…彼だけだったのに…』
泣き出した。
本当は強がってただけで、かなりキテたのかもしれない。
手に持っていたビールをテーブルに置き、楓の側に座った。
「楓。思いっきり泣きな。俺が受け止めてやるから。我慢しないで、泣きたいだけ泣いていいよ。」
楓を包み込み背中をさすって言った。
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