驥服塩車(キフクエンシャ)

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このお方に出来るのは生み出されたものを片付けるだけ。生み出す事が出来るのは、後の事を一切考えていない、私の自由奔放過ぎる主のみ。本当にちぐはぐな役割だと、毎回ながら思ってしまう。 だからどうしても付きまとう負のイメージを払拭すべく、今の時代背景としてはポピュラーな恰好とされているスーツ姿で過ごされているのは、イメージアップを自ら行っている涙ぐましい努力だと褒めるべきところであるはずなのに、それでも最近では『スーツ姿の死神』なんて題材の、ぴったり過ぎるポップカルチャーが定着しているから、第三者の目というものは侮れない。 「お前があの星を放置しているから、最近温暖化がひどいのわかってるのか!?ちゃんと手入れしているのか!?」 「おんだんか?何それ」 「それ位知っておけ!!お前が創った星だろうが!!」 一体どうしてこんなずぼらでものぐさな人が、愛くるしい姿で人々に伝えられ、崇め奉られては、いざと言う時祈られる対象になっているのかと思うと、思わず同情してしまう。 確かに見た目は伝承通り、見目麗しい事に間違いはないが、今深刻な問題とされている『温暖化』の言葉の意味さえ分からず、人々から助けを乞われた時に鳴るはずの唯一の電話は、とうの昔に、頻繁に鳴らされるのがうるさいとかしょうもない理由で線が引きちぎられて今も不通状態が続いている。 「てか、死んだおもちゃの数数えてるなんて、相変わらずマメだねー」 「お前がずぼら過ぎるだけだ。それにおもちゃじゃない、『ヒト』と呼んでやれ」 ヒトに崇拝の対象とされている方はてんで無関心なのに、ヒトから忌み嫌われている方はきちんとヒトの行く末を憂いてくださり、理不尽な数の減少が起こる度、元凶とも呼べるこの方の元に訪れては、誰も怒れない方に対してこうやってきちんとお説教をしてくださる。 一体本当の『神様』はどっちなんだろうか。つくづくちぐはぐに出来ているものだ。世界というものは。
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