驥服塩車(キフクエンシャ)

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「ああ!お前、管理もロクに出来ないくせにまたこんなに創って!」 今度は天井を眺めて頭を抱えだす。その気持ちはよくわかるので思わず同情めいたため息を吐いてしまったらしく、水晶の瞳が面白くなさそうにこちらを睨みつける。 「こいつも迷惑かかってるのに逆ギレするな!」 「だってー!」 (全くだ) この一見無茶苦茶な性格のせいで被害を被っているのはこの方だけではなく、主が知らないだけで、私も裏で何度頭を下げに言ったかわかったものではない。 それでも楽天家ですぐに都合の悪い事は忘れてしまうお気楽な性格が幸いし、本人はストレスや悩みを一切感じる事無く、日々を暇だと言っているだけで終わってしまうし、私ももう諦めの境地に立たされてしまっているが、目の前のお方はそうはいかないのだろう。 私が知る限り、この世でもっともちぐはぐなお2人とはこの方達の事を言うのだろうと思っている。 見た目1つとってもそうだ。 1人は気怠そうにソファーに体をうずめ、どこから持ってきたのか、小汚い毛布を体にかけているだけで、身につけるものは何もなし。 その恰好でいつも過ごしているせいか、『いつもの』恰好のまま遊びに出かけた時にたまたま第三者に見つかってしまい、それからずいぶん経った今でも、主の姿は大体裸で描かれる事がほとんどだ。 せめてと、痴態を見つけてくれた他の使用人が、後から追いかけて毛布を後ろからかけようとした所も見られていたため、毛布を神々しい『羽』と勘違いされたのはまだよかったかもしれない。 そうでなければ威厳もへったくれもない姿が後世まで伝わってしまう所だったのに、張本人はその事を気にも留めない始末。
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