道路工事

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道路工事

 前々から告知の看板が出ていたが、通勤で使っている道路が工事に入った。  対向車線が完全に封鎖される工事なので、道路整備員が片側通行の誘導をする。朝の急いでいる時には痛手だが、工事なら仕方がないので、少し早めに家を出るようにした。  夜も同様に片側通行だが、こちらは俺が残業だらけで、ラッシュ時間に通らないので問題なし。  こんな感じで工事期間中、ちょっと不自由な思いをしながらその道を通っていた。  でもそれも昨日までだ。  工事期間は昨日で終了。道路はすっかり綺麗になり、看板なども撤去された。  朝、道路整備員に止められることなく通勤路を走る。当たり前だが素晴らしく快適だ。  だがその快適さは、夜にはあっさりと失われた。  その日も残業で結構遅い時間だというのに、通りりかかった道には工事中の看板が立てられ、薄明りの中、作業員が動き回る光景が見えた。  いったん終了したが、何か手違いがあったらしく、臨時の突貫工事が行われているらしい。  片側通行が面倒で、工事期間中は迂回していた人もそこそこいるらしく、遅い時間なのにちょっとした渋滞ができている。  ここを通らずに迂回ルートに向かうとなると、家までの距離がかなり遠くなる。それよりはここで少しくらい待たされた方がましか。  葛藤しつつ渋滞の列に並んでいた時、ふと、看板付近で列を誘導する道路整備員の姿が目に入った。  暗がりなので顔はまったく見えない。ただ、赤いランプ状の誘導棒が夜の中に浮かんで見える。  その棒が、妙な動き方で振られるのだ。  こちら側が停まる時には、渋滞列に、横倒しにされた棒がかざされる。通行可能になったら、奥へ流れろというように、道路の向こうを指し示される。あるいは、動いていいというように、手前から奥へ何度も振られる。  今までは確かそんな誘導方法だったのに、今日の道路整備員は、何故か棒を、自分の胸の辺りから地面に向けて振り下ろすように動かしているのだ。
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