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彼の場合~
土曜日に仕事なんざうざいだけだ。解っていたってこれが仕事。取り敢えずクライアントのご機嫌伺いと新しく立ち上げる企画の業者選定をたったと片付ける。
今日は朝からアパートに来てるはず。俺もさくさく片付けたくて8時には家を出ていた。
これなら2時には業務終了だな。その後は大事な買い物。
「おっ先~」
「え、はやっ!」
同僚よ、さらば。俺は今からプロポーズの為の大事なブツを探しにいく。
既にブツは決めてある。前にお世話になった店で、予定のものを見せてもらう。
「あぁ、これだ。」
「いいですね。」
店主も頷く。この光沢。光が反射すると銀色が白く輝く。
「でもほんとにこれでプロポーズするんですか?」
怪訝そうな店主の顔。
「もちろんです。私の惚れた女です。必ず喜んでくれます。」
ナニ、その苦笑い?マジだって。包装も紙バッグにしてさりげない感じにした。
「まあ、貴方の演出の面白さはわたしが一番よく分かってるかもです。成功をお祈りします。」
そう言って彼は笑顔で俺を見送った。
帰る道すがら、覚えのある香りが鼻をくすぐった。
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