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(女房の危機にどっぷり冷や汗をかいた)旦那の場合~
「何やってんだよ、頭ぶつけたらどうすんだ!」
マジで心臓止まるって。
天袋の扉に手をかけて、バランス崩して宙に浮いたその瞬間がフラッシュバック。
ヤダヤダ思い出したくもねえ。
「無事でよかった」
軽く3日ぶりの美那の感触につい力が入っちまう。
あーこれこれ。
くんくん。
皆の匂いだ。
美那の頭が珍しく俺の目線の下にある。
美那は背が高いから、ヒールを履いて俺の横に立つとつむじまでは見えないんだよな。
思わずつむじにチュ。
美那がビクンと身動ぎをする。
どしたの。
俯いちゃって。
「…………癖になりそう」
はああ?
「美那。お前」
「花菜ちゃん、なかなかよいではないの」
何故そこで花菜ちゃんの名が出る?
「何でここにいるのが…………」
気を取り直したのか、正気に戻ったのか。
俺を振り返って聞くお前の顔がいやに色っぽい。
口紅なんか殆ど取れてるのに、真っ赤だ。
「乙女ちゃんが訳の分からんスクランブル掛けてきた」
「何それ?」
「取り敢えず会社に助けにいけ、みたいな」
「乙女ちゃん…………」
がっくりうなだれてるけどな。
「あの電話無かったら、お前下手すりゃ警備員さんに助けられて救急車か、下手すりゃ明日の朝までここでぶっ倒れてたぞ」
「ひゃ?そんなことになったら赤ちゃんが」
「……………赤ちゃん?」
そのまま下を向いて俺の腕を握りしめてくる。
「できたのか?」
「……………まだ、いる感覚は無いけど。
エコーにはモンヤリとタマゴが写ってた」
はうあ!
腕の力を緩めてそっと俺の方を向かせる。
「キスしていいか?」
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