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(もはや気持ちは二泊三日の)女房の場合~
う。
守衛さんがいる。
「こんばんは」
「はい今晩は。名前と所属書いてね」
はあい。
やだ。私の書くところの上の段。
浩司の名前。しっかり会社の名前で書いてるし。
ということは、車は多分営業車ね。
「おや、この営業さんもしかして旦那さんかい?」
あっちゃー。
そりゃそうよね。私達、今並んでるんだし。
何より苗字がおんなじ。
「掃除の腕に、よりがかかるねえ」
守衛さん、皆まで言うな。
目が細くなってるわよ。
なんだかんだで、この守衛さん、声かけてくれるのよね。
よし、書いた。
「はい、浩司、次」
「ほい」
サクサク書いて、
「さようなら」
「はいさようなら。
おめでとう、お大事に」
!
固まる私。
さっきの。
まさかモニターで。
「やっぱり、あっついの一発やっときゃ良かったかな」
浩司、蹴るわよ。
「先に電話入れる」
そうね、今7時。
待っててくれるかな。
カバンからさっきもらったばかりの母子手帳を出す。
私の頃ってもう少し小さかった気がする。
内容も何だか凄い。
ベビー雑誌みたい。
これからこのお腹の子はこの母子手帳と一緒に大きくなるのね。
よっぽどのことがない限り、捨てることのない人生初の手帳。
これから毎月の検診、出産時の分娩状況や予防接種の記録、生後も定期検診の結果が書き込まれていく。
そう考えると、これって個人の歴史書みたいね。
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