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彼の場合~
昨夜もてっぺんに登った直後、女神が降りた。いやマジで。十日も煮詰まってたのが嘘みたいに。
一応昨夜のうちにパソコンにアイデア落としては置いたが、出勤してからは、手直し根回し外回りであっという間に夜も更け、会社に戻ったのは22時過ぎ。
同じく残業中の同僚と飯兼飲みに行こうということになり、会社近くのバーに向かった。
「もうお嫁さんにするしかないんじゃない?」
パスタとバゲットを掻き込み、人心地ついた後、ビールを飲みながらアイツの惚け話を聞かせていたら、とうとうオカマなマスターに逆襲された。
「いや無理でしょう。」
「何で?」
同僚と声をあわせて聞き返される。
「え、だってさ、セックスの相性悪いし俺ら。恋人としては文句なしだけど。」
「はあっ?」
二人揃って大音量で叫びやがった。
「大体盛り上がってる最中に俺仕事モードになるんだよ。あいつはあいつでくしゃみ止まんないし。」
「いやちょっと待てよ。」
同僚が口を挟む。
「くしゃみはちょっとおいといて…その、本当に最中に仕事のこと考えてる?閃くんじゃなくて。」
マスターも口を出す。
「私の知る限りじゃ今までの子達より全然長続きしてるし、何よりあんた惚れてる度合いが違うわよ。」
え?ナニそれ?言われてびっくりなんだが。
同僚がうんうんと頷く。
「なあ、俺も同感。それに心理学的に見ると…」
出たよ、心理学マニア。今度は何の受け売りだ?
「彼女を幸せにしたい。その為には仕事してがつがつ稼がにゃ、というところでしょうか?」
「じゃさ、くしゃみをするのは?」
同僚とマスターが顔を見合せる。
「そりゃあ。」
「ハウスダストでは?」
「ありえーん!」
今度は俺が大音量。
「俺は家事が得意だ。特に布団は週一で外干ししてはたきをかけている。普段俺はくしゃみなぞでんわ?」
マスターが口に手の甲をあてて後ずさる。同僚は少し身を引いたが目は俺をじっと見ていた。
「それは彼女のうちでも?」
彼女の家で…いや無い。多分一度も。
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