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「目を開けてよ、友樹!
ねえ。今すぐ目を覚まして!!」
「里穂ちゃん!!」
お母さんに肩を引かれて私は無理やり友樹から引き離された。
その途端、まるで動力を失ったよう全身から力が抜けた。
「あ……ごめ……なさい」
パイプ椅子に座り込んで、瞳を揺らしながら何とかそれだけ口にすると、お母さんは哀しそうに微笑んで首を振った。
「ううん。いいのよ?
こちらこそ里穂ちゃんの気持ちも考えずに
一方的な事ばかり言ってごめんなさいね」
背中を摩られながら涙をおさめると、私はうまく定まらない視線を足元に落として、椅子の横に置いていた荷物を持ちあげた。
「帰ります」
これ以上長居しても気を遣わせるだけだと悟った私は、そう口にして友樹に目を向けた。
「……ばいばい友樹」
震えそうになる唇を噛んで、彼の手の甲にそっと触れた瞬間
――え?
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