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「と、もき?」
掠れる声で名前を呼ぶと、指先を握る手に少しだけ力が籠った。
「なに里穂?」
3年振りに聞く彼の声に鼓動が痛いほど暴れ出す。
「ほんとに?」
「なにが?」
そう言って切れ長の双眸を開いた友樹は、眩しそうに眉間を寄せてぎゅっと目を閉じた。
「あ、無理しないで。友樹ね。ずっと眠ってたの」
「うん。ずっと夢をみてた。里穂の夢だよ」
涙が止めどなく溢れてシーツに沁みを作っていく。
彼が右手を震わせながら持ち上げるのを見て、私は彼の掌を自分の手で頬にぎゅっと押し付けた。
「里穂、泣かないで?」
力の入らない親指でぎこちなく涙を拭いながら、友樹はゆっくりと瞼を上げて、吸い込まれそうに綺麗な瞳で私を見つめた。
「ね。笑って。笑ってよ里穂」
END
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