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『青の組織』。
メロンが言うには、それこそがジェリーをたぬきの姿にした連中の通称であるらしい。
しかし、実のところジェリーは彼の言葉を少しばかり疑っている。半信半疑、と言ってもいいくらいだ。
そりゃあ、あの夜関わった連中はみんな青い服を身にまとった、今思うと少しばかり怪しい人間ばかりだったけれど、そんな漫画みたいな話をうのみにするのもいかがなものか。
「だからぁ、その『青の組織』ってのは何なわけ? 少しくらい教えてくれたっていいじゃない」
「……」
これまでに何度も繰り返した問いを投げかけてみても、メロンはじっと押し黙ったままだ。
恐らくは彼にも彼なりの事情や青の組織との因縁があるのだろうと踏んではいるが(そうじゃなかったら、わざわざジェリーの為に「一緒に探偵をやろう」なんて言わないだろう)その辺りについて、メロンは未だに沈黙を守っている。
「相棒としてやっていこうってんなら、少しくらいお前さんのこと教えてくれたっていいんじゃな~い?」
「……」
メロンは石のように固く口を閉ざしたまま、ぴくりとも動こうとしない。
そして数秒もすると、今度は左耳にかすかな寝息が聞こえてきた。
カメレオンであるメロンが1日のうち覚醒していられるのはわずか3時間。
つまり、彼は人生(カメレオン生?)のほとんどを夢の中で過ごしているのだ。
「もぉ~!! 私の肩で寝るのやめてって言ったじゃない!!」
ジェリーはぷりぷりと怒りながらメロンを振り落とそうともがくが、どうにもうまくいかない。
「まったく! どいつもこいつもぉ~~っ!!」
ジェリーはそう言うと、脱力して目の前のデスクに突っ伏した。
当然ばらばらと崩れる紙、紙、そして紙。
「あー……早く人間に戻りたい……」
ぼそっと呟いた言葉を聞き届ける者はいない。
ジェリーはそのままゆっくりと目を閉じて、自分も夢の世界に逃避することにした。
直面したくない現実を前にした時、心を安定させるには結局それが一番手っ取り早いのだ。
「むにゃあ……ぬふふ、こんなところでダメだってぇ~……」
コンマ1秒で眠りに落ちたジェリーを、窓から差しこんだ陽の光がうっすらと優しく照らしている。
夏も間近に迫ったある日。
昼寝にはうってつけの午後のことだった。
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