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「――でも、がっぽがっぽですよ?」
女は真剣な顔でそう言って、巧みにジェリーの気を引こうとする。
「ががが、がっぽがっぽ……?」
いともたやすく心をかき乱されるジェリー。
「……騙されるなよ、ジェリー。ありがちな手口だ」
こうなってしまうと、メロンの忠告など右の耳から左の耳へ、だ。
「わわわ、私でも、簡単に……?」
「はい。両手では抱えきれないほどのチップの山に囲まれて、100万……いや、1000万くらい軽いもんです!」
客引きの女がドヤ顔で親指を立てる。
「レッツ・ミリオネア!」
彼女がそう言って威勢よく右腕を振り上げるのとほぼ同時に、ジェリーもその毛むくじゃらな手を天に向けた。
「イエス・ミリオネア!!」
お笑いコンビ顔負けのコンビネーションを見せる二人を、メロンが慌てて怒鳴りつける。
「馬鹿かお前は!! こんな見え透いた嘘に……」
しかし、時すでに遅し。ジェリーの目は完全に『¥マーク』になってしまっている。
「どうして嘘だなんて言えるの?! 私、1000万稼いだら、超絶美人の女の子はべらせて豪遊するんだから!!」
「そう言ってる奴が実際稼いでるところなんて見たことがないぞ。馬鹿なことを言ってないで帰るんだ!」
「嫌だぁ~~!! 私の1000万~~~!!!」
「まったく! 馬鹿なことを言ってないで帰るんだ!!」
やいのやいのと騒ぎ立てる二人を、客引きは困ったような表情で見つめていた。
「お客さんー……頼みますよー! トクベツ安くしとくんでー……」
しかし、必死になって説得を重ねるメロンはおろか、金に目のくらんだジェリーまでもが、目先の言い争いに夢中になって彼の言葉に耳を貸そうとしない。
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