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「勿論、呼ばないわ」
「呼んでも来ないわよ。大阪に引っ越したばかりだし」
「え?」
「引っ越し?」
「どうして?」
美子の台詞に重ねる様にして、淡々と告げた美実の台詞に他の者達が驚いていると、美実がニヤリと笑いながら詳細を語り始めた。
「あそこの馬鹿息子、暮れに二人揃ってどこぞのヤクザに喧嘩を売って返り討ちにあったのよ」
「全然知らなかったわ」
「四十九日法要の時も、お父さんはあの人達を呼ばなかったし」
「それで終わりじゃ無いの。相当ヤバい相手を怒らせたみたいで、搬送先の病院に連日の様に嫌がらせされたんですって」
「何、それ?」
流石に穏やかでは無い内容に姉妹達は目を丸くしたが、美実はどこか楽しげに続けた。
「最初は兄弟で四人部屋に入ってたら、病室の前に黒いリボン付きの特大の菊の花束が置かれていたり、病院食の食器蓋を開けたら虫のオモチャが沢山入っていたり、窓の外からペイント弾が打ち込まれて窓が一面真っ赤になったり」
「怖いわね。どんな人間に喧嘩をふっかけたのかしら?」
「周りの人に迷惑だよね?」
下二人は渋面になって感想を述べたが、上二人は誰による指示なのかをすぐに悟って、盛大に顔を引き攣らせた。そんな対照的な姉妹の表情を眺めながら、美実は素知らぬふりで説明を続ける。
「そんなのが続いて同室の患者さんから苦情が出て、個室に移動後は嫌がらせがエスカレートした上に、本人達だけじゃなくて自宅の敷地内に、早朝ロケット花火を二百発以上打ち込まれたみたいね」
「ロケット花火?」
「二百発?」
揃って目を丸くした妹達に、美実は重々しく頷いてから続けた。
「偶々目撃した新聞配達員の証言だと、四人組の犯人のうち、まず一人が道路上に瓶を横一列にかなりの数を並べて、他の男がそれに一本ずつ花火を差し込み、更に他の男が一本ずつ点火、次の男が新しい花火を瓶に差し込んでって風に、流れ作業で設置と点火を繰り返して、五分前後で撤収したそうよ」
「凄い騒ぎになったでしょうね。タチの悪い愉快犯だわ」
「本当に物騒だよね」
顔を見合わせて不快気に頷き合う美野と美幸を見ながら、美子と美恵は内心で頭を抱えた。
(早朝……、傍迷惑極まりないわね。何をやってるのよ、あいつは!)
(五分で逃走って、手際良過ぎ。本当に敵に回したくはないわ)
そんな中、上機嫌な美実の話は続いた。
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