キミがくれたもの

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進学を決めてからというもの、ワタルは猛勉強を始めた。 今までサボっていた分、遅れを取り戻すのは簡単なことではない。 しかしそれも自らが蒔いた種。 必死になってやった。 するとその甲斐あってぐんぐん成績はあがっていった。 これには担任も驚きを隠せなかったようだ。 だって下位だったワタルの成績が一気に上位へあがったのだから。 「龍王、まさか不正はしてないだろうな?」 二者面談の際に担任が戸惑いがちに聞いてきた。 「してねェよ」 無理もない。 今まであれだけ学校にも迷惑をかけて、授業もろくに受けてなかったのだから。 「オレ、変わったんだよ」 「確かにこのところしっかりと授業にもでているようだし問題も起こしてない。勉強もちゃんとやっているようだな。一体、何があった??」 先生は何も知らないのだ。 「オレを変えてくれた人がいるんだ…」 そういって笑ったワタルの顔は今まで教師にはみせたことがない『いい顔』をしていた。 今までのワタルとは違うのだと直感的に思った。 「龍王、いい顔で笑うようになったな」 「そうかな」 そこには問題児と呼ばれた頃のワタルはいない。
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