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お昼下がりの長閑なひととき。
しかし、校舎裏では何やら不穏な動きがあった。
「うっ…ゲホゲホッ」
ガタイのいい数人の少年が苦しそうにうずくまり、その場を転げまわる。
それぞれの顔には真新しい傷跡が見受けられ、血が滲んでいる。
どうやらケンカがあったらしい。
しかし、彼らの傍らに立つのは一回りも小柄な金髪の少年。
顔立ちもまだ幼い。
その体格からは想像もつかないが、察するにこのケンカの勝者は彼のようだ。
見た目こそ華奢だが、何よりもその表情がそれを物語っている。
そして制服の袖には真新しい血のあとも見受けられる。
少年は傷口の血を拭い、冷やかに彼らを見下ろした。
「もうオレの周りをチョロチョロすンなよ」
少年たちは悔しそうに唇を噛む。
まさかこんなひ弱そうな少年に返り討ちにあうなど予想もしていなかったのだ。
誰が見たって体格差は一目瞭然なのだから。
そんな時。
「龍王(りゅうおう)―!!!!!」
遠くから聞き覚えのある声に呼ばれて、金髪の少年は嫌悪の表情を浮かべた。
声の主も用件も大体は予想がついていたからだ。
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