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「だったら言っていいから。無理すんなよ」
そういって彼はポケットから煙草を取り出すと火をつけた。
…あ、煙草…
ワタルが煙草を吸うのは前から知っていた。
何度となく教室の窓から吸っている姿を眺めていたから。
でもこうしてそばで見るのは初めてだ。
「煙草、体に悪いよ?」
由愛がそう呟くとワタルは苦笑いを浮かべた。
「知ってる。…煙草嫌い?」
「ううん、そういうのじゃないけど…」
…好きじゃない…
言葉にはしなかった。
しかし、ワタルはそんな由愛の表情で察したのかすぐに火を消した。
「無理しなくていいって言ったろ?言いたいことがあるなら遠慮なく言えよ」
「…うん…」
ぶっきらぼうな言葉だったけれど優しさを感じた。
彼は何だかんだ気遣ってくれる。
やっぱり優しい人だと思う。
そしてそんな優しさを素直に嬉しいと思う自分がいる。
私は間違ってなかったんだって思えた。
それから2人は何時間も他愛のない話をしていた。
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