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どれくらいの時間が過ぎたのか、気がつけば窓の外はディープブルーに染まっていく。
夕暮れの空の色だ。
「長居しすぎたな」
不思議だった。
由愛といると時間を忘れてしまう。
もっともっと話したい、そばにいたい。
けれど無情にも時間はあっという間に過ぎていく。
「帰るか」
「うん」
名残惜しい気持ちで店を出た。
帰り道、沈んでいく太陽を眺めながらゆっくりと並んで歩く。
この時間がいつまでも続けばいいのに…
由愛はそう思った。
だって不思議とワタルといると安心できるのだ。
しかし、そんな矢先に二人は思わぬ人達と出くわすことになる。
「アレ?龍王じゃねェか」
突然、降ってきた声にワタルは足を止める。
聞き覚えのある男の声だ。
目の前に太陽を背にした数人のシルエット。
男達が近づいてくるにつれて表情が明らかになっていく。
するとワタルの表情はだんだんと険しくなっていった。
「…楢原(ならはら)センパイ。」
何だか嫌な予感がした。
胸騒ぎがする。
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