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「もしかして彼女とデート中だったか?邪魔して悪いな」
そうは言うものの、ちっとも申し訳なさそうな素振りはない。
「そうですよ。センパイの言う通り、デート中なんスけど」
正直、仲間とはいえ今は関わりたくない連中だ。
だからワタルは由愛の手をひいて男の脇を通り抜けようとする。
だが、楢原と呼ばれた男はワタルの腕を掴み、それを許さなかった。
そして男達が二人をぐるりと取り囲む。
「最近、付き合いが悪くなったと思ったら生意気に彼女が出来てたとはなぁ。しかもこんな頭の良さそうな子、お前には似合わないんじゃねぇの?」
「別に相手が誰でもセンパイには関係ないじゃないですか」
恐い…
由愛はワタルの腕をぎゅっと掴む。
恐いのだろう。
そりゃあこんな男達に囲まれたら恐いに決まっている。
ワタルは厄介な相手に捕まった、と内心毒づく。
楢原という男は同じ中学の先輩で不良仲間の一人だ。
煙草もケンカもこの人から教えられた。
相当な悪さをしているらしいと校内でも有名だし、恐らく噂は本当だろう。
しかし最近、ワタルは彼らと距離をおくようになっていた。
由愛と付き合い始めてからのことだ。
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