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それが顰蹙を買う結果になったらしい。
「なぁ、ワタル。お前、最近調子に乗ってるんじゃねェの?」
そういって楢原はワタルの胸ぐらを掴んで引き寄せた。
そして由愛は他の男達によって引き離される。
「龍王君!」
ただただ恐かった。
しかし、逃げることも捕まれた腕を振り払うことも身動きすらも自由にはできない。
「楠に…いや、彼女には手は出さないでください」
「それはお前の態度次第だろうなぁ」
楢原はニヤリと口元に笑みを浮かべた。
「…オレをどうしたいんですか?」
そう尋ねた瞬間、楢原は思いっきり強烈なパンチを放った。
するとそれはワタルの顔面に直撃し、反動で地面に叩きつけられる。
鈍い痛みに顔が歪む。
そして口の中に血の味が広がっていく。
「…っ…」
「龍王君!!!」
叫び声にも似た由愛の声があたりに響き渡る。
しかし、夕暮れのその場所はやけに静かで助けが現れることはなかった。
間もなく、ワタルが足元をおぼつかせながらも立ち上がる。
すると男たちはそんなワタルを取り囲むと腕をしっかりと掴んで身動きを封じる。
「何すンだよ!」
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