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「行くぞ」
楢原の言葉を合図に男たちはワタルと由愛を解放し、その場を後にした。
去っていく男たちの背中を見つめながら、由愛は力なく地面に座り込む。
そして泣きながら唇を強く噛んだ。
悔しかった。
自分が無力なことを思い知らされた気がして。
何もできなかった。
龍王君が傷だらけになっていく様子を見ていたのに、知っていたのに何もできなかった…
ごめんね…
由愛は動かないワタルのそばに歩み寄ってしばらく泣いていた。
「龍王君…」
声をかけても返事はない。
どうやら意識を失っているようだ。
無理もない、だってあれだけの痛手を負わされたのだから。
どうか無事で…
今はただただそう願うしかなかった―
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