初めてのデート

10/10
前へ
/100ページ
次へ
「行くぞ」 楢原の言葉を合図に男たちはワタルと由愛を解放し、その場を後にした。 去っていく男たちの背中を見つめながら、由愛は力なく地面に座り込む。 そして泣きながら唇を強く噛んだ。 悔しかった。 自分が無力なことを思い知らされた気がして。 何もできなかった。 龍王君が傷だらけになっていく様子を見ていたのに、知っていたのに何もできなかった… ごめんね… 由愛は動かないワタルのそばに歩み寄ってしばらく泣いていた。 「龍王君…」 声をかけても返事はない。 どうやら意識を失っているようだ。 無理もない、だってあれだけの痛手を負わされたのだから。 どうか無事で…     今はただただそう願うしかなかった―    
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加