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「一応、手当てできるところはしたんだけど…」
そう言われてワタルが起き上がろうとすると全身に激痛が走る。
夢じゃなかった。
「…いっ…」
自分の体を見下ろすと血のついた衣服は着替えさせられ、傷口はきれいに手当てされている。
「急に起き上がっちゃダメだよ!」
「そんなことより楠には怪我ないか?」
ワタルは心配そうに由愛の顔を覗き込む。
「私は大丈夫だよ。それより自分の心配!あんなに殴られたんだもん、傷口…痛むでしょ?」
由愛が無事でいてくれてよかった、と心から思う。
だって彼女にはこんな痛みを知ってほしくはないから。
「痛みなんてたいしたことねェよ。元々は自分で蒔いた種だし。それよりも!楠を巻き込んでごめん」
そういってワタルは深々と頭を下げた。
「ううん、怖かったけど…龍王君が無事でいてくれてよかった」
そういって彼女は優しく笑ってくれた。
その笑顔をワタルはいとおしく思う。
あんなに怖い思いをしたのに平然と笑ってみせる彼女は凄いと思う。
たとえ痩せ我慢だとしても。
ケンカに巻き込むのはこれで2回目だ。
彼女はオレのことをどう思っているのだろう。
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