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いい加減、嫌になったかもしれない。
そんなことを思うと途端に恐くなった。
だって、これからも彼女と一緒にいたいと思ったから。
同情でも成り行きでもなく、心からそう思えるようになっていたから。
だからこそ聞けなかった。
聞いてしまったら今の関係が終わってしまう気がして。
散々、無茶して迷惑かけて自分勝手なのはわかってる。
だけど壊したくはなかった。
「迷惑かけてほんっとにごめん。…圭介さんも…本当にすいませんでした」
もう一度、深々と頭を下げる。
そしてワタルは心に誓う、不良達との決別を。
今のままではきっと同じことを繰り返してしまう、だから自分が変わろうと思った。
二度とこんなことが起きないように。
由愛のため、いや、なによりも自分のために…
圭介はワタルの言葉に視線を移し、にっこりと笑った。
笑った顔はやはりどこか由愛と似ている。
とても穏やかそうな人だ。
年の頃は高校生2、3年といったところだろう。
オレとは違い落ち着きがある。
このお兄さんを見る限りでも由愛が良い家庭で育ったことが容易に想像できた。
温かい家族なんだろうな。
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