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そう、それは知られざるワタルの家族の話。
ワタルが学校を終えて帰ってくると母親はいつも家にはいない。
毎日、どこにいっているのかは知らない。
いつも子供のことはほったらかしでどこかへ行ってしまう。
いわゆる育児放棄というやつだ。
そして父親も父親で何年も前に出て行ったきり帰ってこない。
だからもう顔も覚えていない。
そんな家庭環境で育ったワタルは親の愛情なんて感じたことがない。
物心ついた時からそれが当たり前の生活だった。
だけど寂しいと思ったことはない。
だって両親の代わりにばあちゃんがいつもいてくれたから。
そして3コ下の幼い弟も。
「ワタル、おかえり」
くしゃくしゃの笑顔でいつも出迎えてくれるばあちゃん。
あぁ、いつものばあちゃんだ。
あの笑顔を見るとホッとした。
ばあちゃんは母親と違ってしっかりとした人でとても厳しい人だった。
挨拶とか礼儀とかにはうるさかったし、いつも悪さをするとこれでもかってくらい叱られた。
小学生でも容赦なんてなかった。
悪いことは悪いとしっかり教えてくれる人だった。
時にオレたちはそんなばあちゃんをワガママ言って困らせたりもした。
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