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「迷惑をかけてごめんね。ばあちゃん、すぐに良くなるからね」
「うん。早く良くなって帰ってきてよ」
ばあちゃんがいない間、家事はワタルが手探りでこなした。
そして初めて大変さとありがたさに気づく。
帰ってきたらもっとばあちゃんに優しくしてあげよう。
そう思った。
しかし、順調に回復し間もなく退院というところで新たな病気が見つかった。
やはり年齢もあり、ばあちゃんの体はボロボロだったのだ。
病気が見つかってからというもの、ばあちゃんは徐々に弱っていった。
日に日に痩せていき、顔色も悪い。
ワタルには病名は一切知らされないままだった。
そんなある日、ばあちゃんはいつものように様子を見にやってきたワタルに突然呟いた。
「ワタル、もしも…このままばあちゃんが死んだらどうする?」
この日のばあちゃんはいつもと様子が違っていた。
ばあちゃんらしくもなく何だか弱気になっているみたいだ。
「やめてくれよ、死ぬなんて縁起でもない!オレたちばあちゃんがいなくなったら生きていけないんだから」
冗談交じりに笑って見せると、彼女は真剣な顔でワタルを見上げた。
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