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「それじゃダメだよ、ばあちゃんがいなくても生きていけるようになりなさい。私はあんたたちより先に死ぬんだから」
「どうしたんだよ、急にそんな話…」
「いい機会だから言っておこうと思って。もしも、私が死んだらお前がタカちゃんを守っていくんだよ。それだけは忘れちゃいけない。あの子にはお前しかいない、だから強くなりなさい」
「今日、変だよばあちゃん。そんなのわざわざ今じゃなくても…」
「いいや、もしものことがあってからじゃ遅いからね。ばあちゃんはお前たちが心配なんだよ。いつかばあちゃんがいなくなった時、ちゃんと生きていけるかどうか。お願いだから、ばあちゃんがいなくてもちゃんと学校卒業して『立派』な大人になるんだよ」
「わかってるよ、そんなの」
「約束だよ」
―約束。
ワタルは子供みたいにばあちゃんと指切りを交した。
そして彼女は安心したようにくしゃくしゃの笑顔を浮かべた。
この時はまだ知らなかった。
まさかこの数日後、もしもの話が現実になるなんて…
今思えばばあちゃんは知っていたのかもしれない、自分の命がそう長くは続かないことを。
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