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「不思議なんだけど、楠と一緒にいるともやもやと積み重なっていた負の感情がスーッと消えていくような感じがするんです。それを消したくて毎日のようにケンカをしていたのにケンカじゃろくに気は晴れなかった。だからこれでも楠には感謝してるんですよ。その分、失いたくない。あいつらと縁を切るいい機会だと思った」
「でもこんなに傷だらけになってまで…」
「それくらいはあいつらと一緒にいることを決めた時から覚悟してた。だから心配しないで下さい」
「だけど…」
「自分でそうなることを選んだんだから。」
「でもあいつらと縁を切ってもお母さんと一緒の生活は続くんだろ?大丈夫なのか?」
「大丈夫だと…思う。それにお袋と住むのもあと数年の辛抱だと思うし」
「えっ…何で?」
「オレ、ばあちゃん死んでから事情を知っているいとこの店でバイトさせてもらってるんですよ。給料は大したことないけど、少しずつ貯めて生活していけるくらいになったらすぐにでも弟を連れて家を出ようと思ってるんです」
「でもそんなに簡単なことじゃ…」
それはわかってる。
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