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「大変なのはわかってます。でも今のまま家にいてもオレも弟も幸せにはなれないから。だって、あの人は変わらない。だからオレたちが変わるしかないんです」
「見かけによらずしっかりした奴だな」
そういって圭介はじゃれるようにワタルの頭をくしゃくしゃと撫でた。
正直に凄いと思った。
たかが中学生なのに真剣にそこまで考えているなんて。
何不自由なく生活してきた圭介と由愛には考えられないこと。
一見はだらしないように見えてもやっぱり人は見かけじゃないって改めて考えさせられた。
圭介も由愛も思うところがあったのか黙りこんでしまった。
「何か暗くなっちゃいましたね」
ワタルは困ったように笑いながら、ふと視界に入った時計に目を移す。
時計の針はすでに夜の9時になろうとしている。
「あっ、ヤベッ!こんな時間だ!」
そういわれて初めて由愛と圭介も時計を見た。
中学生はとっくに家に帰っているべき時間である。
「うちのお父さんとお母さんもそろそろ帰ってきちゃうかも!」
ワタルはゆっくり立ち上がった。
やっぱり傷口はズキズキ痛む。
「 あ、オレが途中まで送っていくよ」
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