アネモネ

変化

いろんなことがあった初デートから一ヶ月の時が経った。

ワタルの怪我も治り、彼はあの日以来、以前よりも由愛に心を開いてくれるようになった。いつの間にか呼び名も変わっていた。
最近はワタルが不良連中とつるんでいるのを見ることも少ない。
とはいえ、いまだにケンカはたまにしているようでまだまだ本来の姿に戻るまでには時間がかかりそうだ。

肝心の二人の仲はというと順調そのもの。
クラスで噂になるかと思いきや、騒がれることもなく暗黙の了解で公認カップルにされていた。
しかし、二人は相変わらず学校では表面上、今までと変わらなかったけれど。

それでも二人の関係は少しずつ良い方向へと変化していた。

だが、どうも釈然としないことが一つ。

あの日からワタルはなぜか圭介のことを本当の兄のように慕っている。
それもあってか、ワタルは休日になるとバイトまでの合間によく由愛の家へ遊びに来るようになった。

そしてこの日も…

しかし、どうも心から喜べない。
それはワタルの関心がなぜか由愛ではなく、圭介にあるからだ。

いつの間にか二人は大の仲良しになっていた。

「由愛、圭ちゃんいる？」