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嬉しそうに尋ねるワタルを横目に由愛は不機嫌な顔を作って見せた。
さすがの由愛も実の兄にワタルを持っていかれるのは面白くない。
もちろん、変な関係でないのは重々承知だけれど。
ってかそんな関係だったらヤダ。
ワタルはしかめっ面の由愛を見てぷっと笑う。
「もしかして怒ってる?」
「別に」
由愛は不機嫌な顔のまま、子供のようにそっぽを向いて見せた。
そんな様子をみた彼は意地悪に笑いながら由愛の頭をぽんぽんっとした。
「まぁまぁ、拗ねるなって!由愛も一緒にいればいいじゃん!」
一緒にいればいいとかそういう問題じゃないのに!って言いたい。
でも言えない。
だって圭介を訪ねてくるときのワタルの表情は生き生きとしていてすごくいい顔になってるんだもの。
そんなワタルの邪魔なんてできないし、したくない。
…でもやっぱちょっと寂しい。
「あ、ワタル。また来たの?」
そんな時、圭介が自分の部屋からひょっこり顔を出した。
「あっ、圭ちゃん!ねぇ、聞いてよ!!」
今にも玄関先で話し始めそうなワタルを宥めるように玄関へやってくる。
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