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入口を通り抜けフロアに足を伸ばすとそこには小さなステージがあり、柵をはさんでステージと反対側に数人のお客が立っている。
煙草の煙が充満して、独特の雰囲気だ。
「なんかちょっと恐いね」
由愛はちょっとだけ不安そうな表情を覗かせる。
「大丈夫だから」
ワタルにも少しの不安はある。
だって彼らはただの中学生なのだ。
まだまだ知らないことだらけ。
だけど、ワタルは平気な顔をした。
そしていよいよ幕が開き、開演の時間を迎える。
色とりどりのスポットライトがあたりを照らし、大音量の音楽が会話をかき消してしまう。
ドクン。ドクン。
会場中に響く重低音と重なるように心臓の鼓動が早足になっていく。
変な気分だ。
そんな時、舞台袖から4人の男が姿を現す。
その中には圭介の姿もあった。
話には聞いていたが彼らが一番手を務めるらしい。
圭介は向かって右側に立ち、今まで見せたことのない顔でギターをかきならす。
その姿はまさしく圭介。
しかし、ステージに立つ彼はいつもの印象とは全く違って見えた。
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