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私はそんな姿をみるのが好きだった。
だって今まで見たどの顔よりも生き生きして見えたから。
何度かケンカをしているところを見たことがあるけど一度だってそんな顔見たことがない。
仲間とつるんでいるときも、クラスの誰かといる時も、どこかワタルは冷めて見えた。
だから嬉しかった。
ワタルが心から楽しめるものを見つけたこと。
音楽と出会い、少しずつ変わっていく様をそばでずっと見ていたいと思った。
たとえ、構ってもらえなくても心から笑った顔が見られるのならそれで充分。
ギターを片手に夢中になっているワタルは誰よりもかっこいいと思った。
そんなワタルは今まで以上に休日はバイトに明け暮れるようになった。
生活だけではなく、ギターを買うという目標もできたから必死になるのも無理はない。
おかげで由愛と過ごす時間は前以上に少なくなった。
だけど彼女は許してくれた。
応援してくれた。
だから彼女のためにも精一杯頑張ろうと思った。
最初は出来ることから始めればいい。
いつか自分がステージに立つ日を夢見て。
前へと。
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