運命

3/9
前へ
/100ページ
次へ
そして運命の日― 20××年6月25日。 その日は雨が降っていた。 窓から覗く薄暗い空を見上げ、ふとため息をつく。 憂鬱な空だ。 オレはちょうどバイト中だった。 そんな時、突然に携帯電話が鳴り始める。 あっ… マナーにすンの忘れてた!! 珍しくその日は音を消すのを忘れ、店中に携帯の音が鳴り響く。 「ワタル!携帯はマナーにしとけっていつも言ってるだろ!」 店長でいとこの達樹(たつき)は呆れたように言った。 「ごめん、タツ兄ィ」 ワタルは画面もみずに慌てて電話を切る。 しかし、再び電話が鳴り響く。 「仕方ない、電話出ていいよ」 「うん、ごめんっ!」 達樹に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、人目のつかないところで電話を取り出す。 由愛からだ。 一体何の用事だろう。 由愛から電話をかけてくることは滅多にない。 それに彼女は知っているはずだ、自分がバイト中だということを。 よほど緊急なのだろうか。 ワタルは不思議に思いながら電話に出た。 「もしもし…どうした?何かあった?」    
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加