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頬をつねると痛みが走る。
夢じゃない…
「オレ、今から行く…」
「○△病院で待ってるから」
電話をぎゅっと握りしめたまま、ボーッとする頭で駆け出した。
「タツ兄ィ!!ごめん、今日は帰る!」
「あっ、ちょっと…」
達樹が止めるのも聞かず、店を飛び出してとにかく走った。
こんなに全力疾走したのは久しぶりかもしれない。
ワタルが病院に着いた時、玄関で圭介が出迎えてくれる。
そして彼の表情が嘘じゃないんだと物語っている。
「…由愛は…?」
「こっちだ、来て」
圭介に案内され、通された病室に由愛はいた。
真っ白なベッドの上に横たわり、目を閉じている。
額に残る傷跡が痛々しいけれど、その姿はただ眠っているかのようだった。
ワタルは彼女の隣に腰かけるとそっと彼女の手を取った。
まだぬくもりは残っている。
けれど、いつものような温かさはない。
「由愛…目を覚ませよ」
彼女に向って静かに話しかけた。
しかし、反応はない。
体を揺さぶってみても、顔をつねってみても彼女は目を閉じたまま。
「嘘だろ?みんなして…オレを驚かそうと思ってるんだろ?」
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