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冗談交じりに呟いてみたけれど、涙がこみ上げてきて声が震えてしまう。
それはワタルにとってあまりにも残酷な現実だった。
「どうして目を開けてくれないんだよ…いつもみたいに笑って…」
何を言っても、決して由愛が目覚めることはない。
もう動くことも、声を聞くこともできないのだ。
それを思うとワタルはその場に泣き崩れた。
家族以外の人前で泣くのは生まれて初めてだった。
「ワタル…」
隣で様子を見ていた圭介はそっとワタルの肩を抱く。
そして声を押し殺しながら一緒に泣いた。
信じたくはない。
だけど信じるしかないのだ。
これが現実なのだと…
だけどすぐに受け止められるほどワタルは大人ではなかった。
だって由愛はまだ15歳だったんだ。
これからやりたいこともいっぱいあったはず。
それなのに、どうして神様は由愛を選んだのだろう。
どうせならオレが死ねばよかったのに。
身代わりになれるものならなりたかった。
きっと後悔はしない。
後を追うなんて馬鹿なことは考えなかったけど、この夜は深い闇に落ちた。
そして葛藤の日々が始まる。
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