32人が本棚に入れています
本棚に追加
由愛の死はその日のうちに学校に知らされ、翌日の土曜日に通夜がしめやかに行われることになった。
突然の出来事に戸惑いを隠せない生徒達が続々と姿を現し、別れを惜しむ。
きちんと制服に身を包み、それぞれの想いを心に秘めて。
中には泣いてる者もいたし、冷静に死を受けとめようとしている者もいる。
そんな中、ワタルは目を真っ赤に腫らして会場に現れた。
どうやら夕べは眠れなかったようだ。
その表情に笑みはない。
そんな面持ちのワタルをみんなが次々に振り返る。
それというのも明らかに彼が変化しているのが見受けられたからだ。
金髪だった髪は黒く染め、きちんと制服を着こんでいた。
まるで人が変わったようにも思えるその風貌にみんな驚きを隠せずにいた。
「あれって龍王君?」
口々にヒソヒソと噂されていたのはわかった。
でもワタルは耳も貸さず親族に見守られる中、由愛の前に立つ。
やっぱり眠っているように思える。
目を覚ますんじゃないかと期待してしまう。
…だけど戻りはしない。
それが現実。
悲しいけれどこれが由愛と会える最後のチャンスなのだ。
もう二度と会うことはできなくなる。
最初のコメントを投稿しよう!