キミがくれたもの

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由愛を失ってからというものワタルは荒れた。 空っぽになってしまった心を埋める術など知らない。 再びケンカに明け暮れ、止めた煙草もまた吸うようになった。 まるで余計なことを考える暇など消しさろうとしているかのように。 どうしても一人になるといろいろと考えてしまうのが嫌だった。 頭をよぎるのは楽しかった思い出、そして彼女の笑顔。 頭では分かっているつもりでも、やっぱり心が現実を受け入れられない。 強いつもりでいたけど、こんなにも弱い人間なんだって思い知らされた。 力ばかり強くなっても心はこんなにも脆い。 そんな毎日が続いたある日、ふと、電話が鳴った。 圭介からだ。 その名前をみて電話を取る手が震えた。 オレは由愛の葬式から一度も圭介には連絡を取っていない。 由愛がいなくなった今、どんな風に接していいのかわからなかった。 それに今は彼女のことを思い出すのも辛い。 おかげでせっかく始めたギターも置き去りにされたまま。 音楽は今も好きだ。 けれど、今は何も手につかないのだ。 「久しぶりだね。元気にしてるか?」 電話口から聞こえる圭介の声は心なしか思ったよりも元気そうだった。
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