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「…うん。元気にしてるよ。圭ちゃんは?」
「オレも元気だよ」
いつも通りに話すワタルだがやはりどこかぎこちない気がした。
圭介のことは慕っているし、由愛がいなくてもそれは変わらない。
けど、今はお互いに戸惑いが隠せない。
「なぁ、ワタル」
戸惑いながらも先に話を切りだしたのは圭介のほうだった。
「今日はさ、ワタルに見てほしいものがあって連絡したんだ。近々、うちに来てくれないか?」
「…見てほしいもの?」
正直、今はあまり乗り気にはなれない。
由愛の家に行けば嫌でも彼女がいないことを思い知らされるから。
それに圭介にどんな顔をして会えばいいのかもわからない。
「由愛の日記をワタルに読んで欲しいんだ」
「日記…でもオレ、まだ気持ちの整理がつかなくて…冷静に読める自信がない」
「…そんなのオレも同じだよ。今になっても信じられないんだ、頭ではわかってるつもりなんだけどさ。いつかひょっこり帰ってくるような気がして」
圭介も同じだった。
ましてや家族なのだからワタルよりその悲しみは深いはずだ。
それでも彼はワタルに見せたいといってひかなかった。
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