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―最近、ワタル君がよく遊びにくるようになった。
本当にギターを始めたみたい。
だからってお兄ちゃんにつきっきりなのはちょっと悔しい。
私も構ってほしいのに!
でもね、今は見守ろうと思うんだ。
だってギターを教わってるワタル君、すっごくいい顔してるんだもん。
私、音楽をやってるワタル君が一番好き!
彼が楽しそうにしている姿を見てると私も嬉しくなるの。
いつか…
ステージに立ってるワタル君みれたらいいな。
そんな由愛の言葉が胸に染みて不意に涙が溢れていた。
オレ、一体何をやってるんだろう。
いつも自分のことばかりで由愛がこんな風に思っててくれたなんて気づかなかった。
彼女はいつだってオレを応援していてくれたんだ。
それなのにオレはギターも音楽も離れようとしていた。
由愛の気持ちも知らずに…
オレ、まだ由愛に恩返しできてない。
こんなことで恩返しになるとは思えないけど、由愛が好きでいてくれた自分でいたいと思った。
音楽を続けよう。
先のことなんてまだわからないけど、やれるところまでやってみよう。
もう、由愛はいないけど…後悔しないように。
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