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「ワタル、お待たせ…」
ガチャ、とドアが開いて飲み物を持った圭介が部屋に入ってきた。
ワタルは日記に集中しているようで気づいていないようだ。
圭介はそんなワタルの顔を覗き込む。
するとそんなワタルの頬に涙の流れた跡があった。
「圭ちゃん…」
「ん?」
「オレさ、もう一度ギター始めてみようと思うんだ」
ワタルがそう呟くと圭介はワタルの頭をポンッと叩いて笑った。
「そっか。やってみろよ、音楽好きなんだろ?」
「うん」
「そのほうが由愛も喜ぶよ」
そういうだけで圭介は余計なことは何も聞かなかった。
それから…
ワタルは今まで以上に音楽に打ち込むようになった。
音楽に向き合っていると充実できた。
やっぱり寂しさはいつでもついて回るけどめげてる暇なんてない。
音楽があるからバイトも今まで以上に頑張れたし、学校だって苦ではなかった。
相変わらず家庭環境は酷い有り様だけど、精神的に楽になった気がする。
話を聞いてくれる人ができたからかな?
今のワタルには音楽が生き甲斐だった。
由愛がいなくなっても頑張ってるよ。
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