キミがくれたもの

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やがて、時間は過ぎ受験が目前の慌ただしい季節になった。 クラス中が受験一色で気がめいってしまいそうだ。 しかし、ワタルもまた受験の波に飲み込まれていた。 というのも元々は中学を卒業したら働こうと思っていたワタルだったが、今は高校受験をするつもりだからだ。 それには理由がある。 実はある日、母親が初めて真剣な顔でワタルにいったのだ。 「ワタル、あんたちゃんと高校にいきなさい。お金は私が何とかするから…」 初めて母親らしい言葉を聞いた気がした。 「だけどあんたにどうにかできんの?」 「これでもあたしはあんたの母親なのよ。今まで母親らしいこと何もしてこなかったけど、あんたを高校に行かせるくらいはできるわよ!」 「だけど…」 「口ごたえしない!あんたたちにばっか働かせるわけにはいかないでしょ」 まさかの言葉にびっくりしたけど嬉しかった。 あれだけ何をしてもダメだった母親が変わったのだ。 これは凄い進歩だと思う。 今度こそ信じてもいいかな? 不安はいっぱいある。 でも、もう一度だけ自分の母親を信じてみようと思った。 だから、進学を決めた。
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