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桜太がその楓翔の横に目を向けると、頷いて同意している男子がいた。彼も科学部のメンバーで杉原迅である。ちなみに二人とも判で押したように眼鏡を掛けていた。
「ここにいる奴らに馬鹿にされたくないな。全員同じ穴の狢だろ。楓翔だって地質バカのくせに」
悔しくなった桜太は叫んだ。しかしそのせいで千晴から冷たい視線だけでなく溜め息まで貰うことになってしまった。
「何だよ」
桜太がちょいっと千晴の肩を突く。
「それを言っては元も子もないの。この科学部がなんて呼ばれているか忘れたの?」
千晴はそれはもう悲しいというのを全面に出して問いかける。
「えっ?何だったけ?将来はノーベル賞受賞者の集まりとか?」
部長のくせに呑気なことを言い放つ桜太である。そんな尊敬されるようなことは何一つしていない。
「そんなわけあるか。変人の吹き溜まりよ。変人だけでなく吹き溜まり。解る?」
自らがそのメンバーであることが悲しい表現を千晴は全力で叫んだ。
「いつ聞いても凄い表現だよな。誰が思いついたんだろ?」
そこにのんびりと遅れてやって来た男子生徒がドアを開けると同時に訊いた。彼もまた科学部のメンバーで、これで全員だった。遅刻が常の彼は新堂優我だ。彼もまた眼鏡である。唯一の女子である千晴を除いて全員が眼鏡。これだけでも凄いことだった。
「たしかに昔から言われているみたいだよな。引退した三年の先輩たちも強烈だったというか奇天烈だったというか」
まったくフォローにならない感想を迅が漏らす。どういうわけか、科学部に集まるのは何かを偏愛している奴らなのだ。その中でも引退した三年生は個性的だった。彼らが愛していたのはアマガエルや惑星というもので、二つ並べても普通の人の興味から外れがちだ。
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