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もう一人、最大に変だった人物がいたがそれは全員が記憶から抹消していた。彼が愛したものに関しては問いかけてはならないことになってもいたのだ。何故なら問いかけて聞かされる説明は気持ち悪いの一言に尽きる。因みにその人物は悲しいことに前部長である。
ちなみに現メンバーも計り知れないほどずれている。桜太はブラックホール、千晴は元素、楓翔が地質で迅が素数、そして優我が量子力学と分野もばらばらだった。
「三年生がいなくなって、この科学部は輪を掛けて静かになったよな。俺たちの中に奇行をする奴はいないし。しかも一年生はゼロ。このまま来年もゼロだったら廃部決定だぜ」
悲しい事実を優我が指摘した。ここにいる五人が総て。しかも全員が二年生なのだ。
「うっ。そうだった。その問題を託されていたんだった。何とか春までに新入生獲得の方法を考えないといけない。いくら変人の吹き溜まりと蔑まれていようと、必要とする人々はいつの時代も存在するものだぞ。それなのに何故今年はゼロなんだ?」
ようやく部長の立場を思い出した桜太が悩む。今は興味あるブラックホールよりも解決しないといけない問題が目の前にあるのだ。この愛する空間を自分たちの世代で途絶えさせるのは忍びない。しかも三年生からも頼まれている。何とかしないといけなかった。
「何か成果があればなあ。しかし何をすればいいのか?そもそもどうしてゼロなんだ?」
桜太はメンバーを見渡して訊く。この夏休み直前の、対策を立てるなら今しかないという時ですら全員がばらばらなことをしているのだ。アピールも何もない。
「ゼロの原因は目立たないだけじゃないな。科学部に入ってももてない」
楓翔がずばっと痛いところを突く。やはり高校の部活で憧れるといえば恋だろう。青春していますと訴えられるものだ。
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